東伊豆の家 緑の中に浮かぶ終の住処
2014 – 2015
静岡県

東伊豆の家は、渓谷沿い の棚地に計画された 終の住処 です。末期癌を患っていたクライアントが、最後に溶けいるように逝きたいと求めた抽象的な 自然観 と住まいとの関係性、佇まいとしての存在感と調和性について、計画からディテール、仕様に至るまで、様々な次元で試行錯誤したものです。

肉体が衰えていく中で、自然の中に溶け入っていくという願いに対しては、主要な居住域を2階に設け、庇に覆われたバルコニーを谷側にせり出すことで、緑の中に浮かぶような家を導きました。 また、車いすとなっても2階を生活の中心に据えたいという強い要望から、ホームエレベータも採用しています。それは、クライアントにとってはオーバースペックなものではなかったのです。

谷側の躍動的ともいえる存在感とは対照的に、山側の外観は、崖地であることから2階だけが見えることを活かし、周辺の木造平屋の建物と馴染む、シンプルな小屋 をイメージしています。実際、谷側の外観は、限られた人しか目にすることはありません。このほとんんど生き様に近い、振る舞いの美学ともいえるものは、このプロジェクトにおいて、クライアントと共有できた大きなことのひとつでした。

外装は黒いガルバリウム鋼板で縁取られたベースに対して、板張りや黒漆喰などの経年変化を伴う素材で構成しました。将来的には、斑を伴うグレーに変色し、風合いを醸し出すこれらの天然素材と共に、モノトーンの風格となって、次世代に遺されて行く住宅建築になってほしいという願いを込めています。

余命を知りながらも、あえてこの地に終の住処を建てたことは、次世代へ遺すためのメッセージでもあり、その中には、お金には還元できない豊かさについての問いも含まれているように思います。

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用途:戸建住宅|構造:在来軸組構法|規模:地上2階建て|
設計・監理:きみづかアーキテクツ|構造:さくら設計集団構造設計室
写真:安田 誠、その他

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著作:スミツグイエ 
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