所在地:静岡県
主要用途:宿泊施設
構造・規模:木造 平屋
延床面積:88㎡
傾斜地に建つ廃屋を改修した一棟貸しの別邸です。外観はほとんど人目につかないため、アプローチから施設内部の利用に至るまで、すべて来訪者の内側からのシークエンスや身体性をシミュレーションしながら計画されています。
長いアプローチ側から斜めに建物へ切り込む動線は、谷側のフルハイト窓に近づくにつれて遠景の海がスライドしながら視界に入って来ます。また、遠景は、アプローチとは対照的に、玄関から窓に向かって逆パースをかけることで、開口部の大きさや、そこに至る距離感が操作されながら取り込まれています。
浴室は居室とガラスパーテションで仕切られ、視覚的に連続する一方で、外部にも開放可能な半露店風呂となっています。大きな開口部に面した湯船とオリジナルの自湯口から注がれる温泉により揺れる水面は、遠くの海と湯船の境界をぼかし、湯船につかると、まるで連続しているかのような錯覚を来訪者に与えます。
photo: kentaro kimizuka