現代住宅では、リビングよりダイニングキッチンが家族のコミュニケーションの中心となることが多いのではないでしょうか。コミュニケーションという観点からは、もしかしたら、リビングはいらないかもしれません。
この住宅のクライアントもダイニングキッチンに拘りを持っており、オリジナルのキッチンとダイニングテーブルを作ることを望まれました。引出や棚の位置、什器、カウンター、背面収納のひとつひとつを打ち合わせて作ったオリジナルですが、キッチンメーカーを使わずに、大工さん、建具屋さん、金物屋さん、塗装屋さんによってつくることでローコスト化を図っています。キッチンメーカーと比べ精度は少し劣りますが、予算に合わせてオリジナルに拘る際の一つの方法です。
そして、一番の目玉は、隣地の緑を取り込んだ明るいキッチンです。将来、隣地に建物が建ち、この緑は失われるかもしれません。しかし、たとえ、5年、10年と限られた時間であっても、緑の傍のキッチンの記憶は、家族にとっての固有の豊かさとして刻まれていくはずです。
写真:Makoto Yasuda/ Nakasa&Partners (1左), S. Ohshima, Kimizuka Architects (2右)