住み継ぐ家 #9 ~ 木製建具 と 古民家 の相性

外部の 木製建具 には、昔ながらの 木製建具屋 が作る場合と、外来の 木製サッシ を用いる場合がある。現代的な尺度から、気密性 や材質、強度などを考えたら外来の 木製サッシ の方が良い。しかし、それらは、かなりごつく、重たいもので、古民家 に採用する場合は違和感が生じることが多い。また、言うまでもなく、コストも高い。一方、木製建具屋 が作る場合は、昔ながらの建具に、多少 現代のディテール を折衷したかたちになる。しかし、木製サッシ の ヘーベシーベ のような、特殊な金物が内蔵され 気密性 が確保されるわけでも、精密に規格化されたサッシ枠があるわけでもない。また、材質も加工のしやすさなど技術レベル上の問題から、ソフトウッド で作られることもあるが、こういった樹種は、建具屋が使い慣れたものでないと、品質的に問題が生じる可能性もある。板金や左官同様、職人の技量、裁量にある程度依存せざるを得ないところがある。一方、利点は何かと言えば、内部木造作 の延長なので、古民家 のような建物との相性は比較的よく、違和感なしにしっくり納まってくれる。また、コスト的にも 木製サッシ と比べるとかなり安い。

今回は、古民家 との相性や、コスト的な見地から、メインの建具は 木製建具屋 によってつくられた。あえて、 アルミサッシ を使わないことに拘るのも住まい手の価値観であり、そういう価値観の集積により、豊かさは築かれる。なお、メインでない建具とは、寝室や浴室などの窓が主だが、それらには通常の アルミサッシ を採用した。性能的には適材適所といったところだろう。

木製建具 による 気密性 の限界はというと、縦枠同士は 召し合わせ 的な ディテール を枠形状でつくり、エアタイトゴム などを合わせ部にかまし、クレセント などで引き寄せればある程度の 気密性能 は得られる。しかし、上下枠、特に下枠の 気密性 は、戸車の問題から特殊な金物がないと確保するのが難しい。この点は外来の 木製サッシ は非常によくできている。したがって、もし、そういった性能的な欠点に配慮するなら、このような建具は、玄関や縁側など多少 気密性 がなくても許容できるエリアか、窓廻りにヒーターが効く環境に、なるべく採用した方が良い。

木製建具 と 古民家

今回、 木製建具 がもっともその特性を発揮したのは、正面の 縁側廻り の 掃き出し連窓 部分だろう。この部分の 鴨居 より上は既存の 欄間窓 である。解体時は丁寧に外し、新たな 鴨居 に交換してからまた取り付けた。こう言うことができるのは昔の木造の特性とも言える。そして、鴨居 下の 連窓 が今回 建具屋 によって製作されたものだが、これが、もし、外来の 木製サッシ だったら、かなり違和感のあるものになっていただろう。

ところで、この 縁側の連窓 は、 戸袋 に建具を収納することで、全開放可能なつくりになっている。縁側 の前には、将来的に 濡れ縁 をつくり、食堂の屋外席としても利用することが想定されている。このような 縁側 の 全開放 の原風景は、昔の農家の 古民家 では当たり前のように見られていたものだろう。しかし、現代の住まいでは、せっかくつくっても、窓を閉め切って使われることも多いのが現実ではある。今回は 食堂兼用住宅 の客席として、 屋内外の連続性 も期待される部分として提案されたものだ。中間期の日昼くらいは全開放して使われたら、作った甲斐があったというものだ。

このプロジェクトをやりながら、しばしば、私の今は亡き父の実家を思い出した。父の実家はもともと農家で、家も典型的な田舎の 古民家 のつくりだった。その民家は 離れ としてつくられたものだったので、今思えばとても小さかったが、毎年訪れていた幼少期の私には、とても大きく見えた。その頃はまだ、 縁側 に サッシ が無く、雨戸 だけだった。ガラスのある窓は小さな窓と玄関の引き戸くらいだったと記憶している。そして、昼間の 縁側 はいつも開けっ放し、大きな玄関の様なもので、出入りも 縁側 からしていた。そして、夜は基本的に 雨戸 を閉めていたような気がするが、夏の暑い夜は 雨戸 を閉めずに 縁側 に蚊取り線香を置き、蚊帳をはって寝ていたこともあったかもしれない。しかし、夜になっても 雨戸 をしめないと、蛍光灯を消しても、どこからか、都会ではみたこともない大きな蛾が侵入し、小屋壁の上の方に不気味にとまっていたのを記憶している。しかし、それもまた、 古民家 ならではの思い出だ。

現代の 日本家屋縁側 は、さすがに 雨戸 だけということはなく、 掃き出し窓 が普通ついている。だから、閉め切っても日中の採光は確保できる。また、LED照明の時代となり、夜窓を開けていても、照明が理由でたくさん虫が入ってくることは少なくなった。にも拘らず、昼夜問わず、窓を閉め切っている家が多い。しかし、 縁側 が全開放出来ないというのは、 古民家 として、というよりも、日本家屋 として、片手落ちではないだろうか。 全開放 するか否かは、住まい手次第ではあるが、 全開放 出来るようにしておくことに、 住み継ぐ家 としての意味があるように思う。雨戸兼用 の 連窓 はそういった背景もあって提案されたものである。

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