住み継ぐ家 #11 〜 基礎石廻りの補強

この 古民家 の既存の 基礎石 は奇妙なことになっていた。

30年以上前にこの古民家には大規模な改修が入っている。その時に腐っていた柱脚部を切断し、元の 基礎石 との間に大きめの石のブロックを差し込んだようだ。少なくとも太い主要柱の全てでそれをしている。

元の 基礎石 は根固めをしてから埋め込んであるからか、柱の沈下は今回の調査ではみられなかった。しかし、表土は比較的柔らかいため、あってないようなものと考えると、この 古民家 は事実上、元の基礎石、新しい大きな石ブロック、柱が、絶妙なバランスで積み重なり建っていたことになる。実際、石ブロックのまわりの土をすいてみるとそれは明らかだった。写真で見ると危なっかしく見えるが、石ブロックの周りの土の強度はほとんどないので実際はこの状態で建っていたに等しい。逆に言うと、柱の軸線が地震等で元の基礎石からずれたら、挟まれた石ブロックが傾き、柱が沈下する可能性もあるという事だ。けして、頑丈な足固めがなされていたわけでもないのに柱のズレや沈下がほとんど見られなかったのは幸いか、この方法の中に何か未知の可能性が潜んでいるからか。

ところで、通常、 伝統的構法 で柱脚が腐った際の対処は、 根継ぎ によって行うのが大道である。もっとも、床下の防湿措置がされないならいずれはまた腐ってしまうのだが。この根継ぎ は、同種の乾燥木材の手配や、現地での仕口の加工など、材料、大工手間費の上に、高度な技術が必要である。これだけの本数の根継ぎを民家に対して行うことは、当初でも難しかったのだろう。ただ、間に石ブロックを挟み柱脚が上に上がったので、若干腐りにくい環境にはなったとは言えるかもしれない。

玉石基礎 に対する 耐震補強 のスタンダードとして、土間コン等によりそれらを一体化し、地震時の玉石基礎のグラつきを軽減するというのがある。これは同時に防湿効果もあるから一石二鳥である。今回もそれに準じることとなったが、間に挾まれている石ブロックが大きいため、それらのぐらつきに対して、周辺コンクリートの厚みや配筋の補強が構造家により提案された。また、柱脚部に腐食がみられるところは今回も切断ということになり、その部位は、既存の石ブロック上に嵩上げコンクリートを打ち、万が一、地震で柱がずれることがあっても脱落しないよう配慮することになった。

必ずしもスタンダードな理想形式をはめることのできない個別の問題については、少なくとも原理的な根拠や仮定に基づき進めなくてはならない。仮にその結果が未知数であったとしても、そういう論理とデータの蓄積が未来につながっていくことになる。

構造解析モデルに基づき骨組を考える現代木造と、必ずしも規則的でない土着的骨組が先にあり、それにモデルを当てはめて類推しなくてはならない古民家改修とは、まったくもって、似て非なる世界なのである。

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