住み継ぐ家 #8 〜 古民家がそうありたいと思う願い

古民家と言う、いわば、伝統的土着構法 の家を 住み継ぐ にあたって、耐震補強 しかり、時代の要請に従いながら、本来そのものが持っていただろう自然なあり方を曲げねばならないことは、心苦しい部分もあるが、ある程度は仕方がない。しかし、あまりにも 各一的な価値観 に右へ倣えし続け、固有性 を欠点として扱うのは、やはり、寂しいことではある。地方が東京を真似たところで、古いものに新しい鋳型を無理やり嵌め込んだところで、結局はそれ未満にしかならない。同じ尺度で評価しようとすれば、それは避けられないことだが、其々の資質や個性に気付き、独自の価値尺度 によって、それを伸ばすことの方が本当は価値があるように思える。

例えば、このプロジェクトで外装に採用されている 木板張り や 木製建具 、前回紹介した 黒漆喰 も、現代的な尺度では、どちらかとネガティヴな要素という見方もある。しかし、視点を少し変えてみれば、それらは、この 古民家がそうありたいという願い からくる、ひとつの自然なあり方であり、それを採用したいというクライアントの願いも含めて、とても真っ当なことであるようにも思う。

木板張り検討模型

ただ、古民家と言えど、そこで現代生活を営む以上、ある程度の 機能、性能、そして予算面での均衡 は検討しなければならない。それによって少なからず中途半端なものになったとしてもである。

住み継ぐ家 の南側半分の外装は、この地方産の 杉板張り である。幅広の 下見張り に押縁 を直行させて押さえるのが 古民家 の定番だが、今回の納まりは、 幅狭の縦張り のジョイントに沿って 押縁 を入れている。新建材のツルツルピカピカの外装は避け、既存部と調和し、経年変化を許容する仕上げということで、裏庭側の 黒漆喰 と対になるかたちで正面に採用されているが、 住み継いでいく 上で、出来るだけ 部分補修 がしやすい納まりとした。

幅狭の縦張り は、それ自体は珍しいものではなく、昔の木造家屋ではよく見られる。しかし、 押縁 がなく、釘頭を隠す ホンザネ納まり の場合、真ん中の一枚を張り替えたいという時は、その一枚についてはビスなり釘なりを板の表から直接打たなくてはならないので頭がみえてしまう。また、サネがなくなるので雨仕舞い的にも上手くない。ジョイントを 押縁 で覆う納まりにしておけば、 押縁 のビスは共通して見えるが、板側のビスや釘の頭は隠せるので、張り替え前と後で見え方がかわらない。そもそも、この納まりの場合、板張り部は ホンザネ でなくてもよく、幅も自由である。板同士の多少の隙間も許容するので DIY でも出来る納まりである。

今回は、 高圧縮材 や デッキ材 のような材料を用いるわけではなく、地元で普通に流通している 杉の間伐材 である。部分張り替えの頻度もある程度想定すると、幅が狭い方が新旧の板の色の濃淡による斑も、バランスよく馴染む。もっとも、その考えを突き詰めるなら、本当はもっと幅が狭くてもよかったかもしれない。その場合、材厚は撓みを考慮して増すことになるかもしれないが、 押縁 の凹凸による影が生み出す様々な堀の表情が、より繊細で豊かなものとなっていただろう。

古民家がそうありたいと思う願い

→ 住み継ぐ家#9