住み継ぐ家 #3 ~ 与条件とポテンシャル

与条件とポテンシャル

新築 の 設計 の際は、敷地を調査することから始めるが、改修 の 設計 の際は、さらに、既存建物の調査 も行わなければならない。こういった、与条件 というのは、設計者がコントロールできる範囲ではないが、与条件 を運命と読み替えるなら、それとどう向き合って未来を築いていくのかを、建主と共に考えていくことが、我々の仕事である。新築であれ改修であれ、現況というのは概して問題をはらんでいる。それは、楽しいものではないことも多い。しかし、そこで、卑屈になってはならない。目の前の現実というのは、受け身で接しているうちは基本的に退屈で先が見えないものである。逆に言えば、そこには、無限のポテンシャル が秘められているとも言えるのだ。

被災した建物 に正面から対置して、壊してしまえと思うのか、それを宝の山と感じるのか、全ては考え方ひとつである。もっとも、設計者 だけではどうにもならない。主役は他でもない 建主 である。だから、私は、どんな難しいプロジェクトであっても、建主に可能性を見出せる仕事は喜んで引き受ける。このプロジェクトも例外ではない。

このプロジェクトをやることになって、ほとんど初めて 仙台 の地に立ち、その後、幾度も訪れることになったのだが、ずっと印象が変わらないことがある。それは、空の広さとその色である。空の広さというのは、今回の敷地が、まわりに高い建物がないに加え、海に近い平野部であるためであり、当然と言えば当然なのだが、もう一つの特徴である空の色については、いつもどことなく淡く、白い。以前仕事で住んだことのあるオランダやイギリスも曇りが多い国だったが、仙台は、晴天の日でさえ、空はとても薄いブルーの印象がある。たまたま自分が訪れたときがそうだったということなのかもしれないが、このような光が、建物や風景の見え方に少なからず影響を与えているように感じている。

Sさんの実家は、大きくは3つの棟によって構成されていた。一つは今回対象となっている 古民家 、そして同じく 古民家 の作りでできている倉庫、そして、もう一つは、比較的最近に建てられ、現在はご両親が住んでいる家である。3つの建物は基本的に 白い壁 の建物で、横に一列に並び、その背後の 裏庭 は 防風林 に囲まれた 畑 になっていた。初めて敷地に訪れたとき、広大な敷地 に建ち並ぶこれらの3つの 白い建物 が、白く 広い空 の下で、私には寒々しく映った。そして、その寒々しさを暖かくしていくためのプロセスが、今、これから、まさに始まろうとしているのだと身を引き締めたのだった。

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